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危険な甘いショコラ~ショコラティエ×特捜~part22

「あら?レ・クランの葵井さんじゃないですか?」

そう声を掛けてきたのはマダムという呼び名がピッタリの中年の女性だった

彼女は高級ブランドで頭の先からつま先まで揃えて、仁さんに満面の笑みを浮かべて手を振る指先は重たそうなネイルが施されていた

「先日は美味しいショコラをありがとうございました!取引先のベルギーの社長さんも大絶賛でしたわ!」

そういえば三斗希君が言ってたっけ

ベルギーからショコラ好きの偉い人が来るから、日本の美味しいショコラでおもてなししたいと依頼があって

ベルギーに留学していた仁さんがベルギーの代表的なナッツクリームを詰めたプラリネを日本風にアレンジした

プラリネに使用するトルコ産の最高級ヘーゼルナッツは、丁寧に細かく挽かれ、なめらかな舌触に仕上げた

「あれは職人仁兄さんのこだわりの逸品だったよ。俺にはまだあそこまでの丁寧な仕事はできないな」

もちろん一吹さんも太鼓判を押して納品したんだと聞いた

その時のクライアントさんなのね

「おかげで大きな商談も上手く行きそうよ!本当に感謝してるわ!」

マダムは仁さんに超至近距離まで体を寄せてくる

一瞬仁さんがムッとした表情になったのがわかったけど、さすがに手を払うような事はしなかった

マダムは私の事なんて目に入らないかのように仁さんを見つめている

「ちゃんとお礼をしなきゃって思っていたところなの!今からお食事なんていかが?このホテルのA5ランクのステーキは絶品なのよ~」

「いえ、俺は…」

仁さんはチラッと私を見た

マダムもようやく気付いたように私に視線を向けた

「あら、アシスタントさんもいらしたのね」

アシスタント?

普通、ホテルのロビーに男女がいて恋人とより仕事仲間って思う?

それは私を仁さんの彼女と認めない事を前提に話してるってことよね

仁さんに対する乙女アピールのオーラがマダムの背後に揺らいで見えた

「なんなら一緒にお食事に付き合ってくださってもいいわよ」

暗に来るなって言ってるよね…

あからさまな態度に怒る気にもなれなかった

それよりも…

ここで拗ねたらまたさっきの事と同じだ

仁さんを信じて、仁さんの為、レ・クランの為に私は動かないと…

「仁さん、一緒にお食事に行ってきて下さい。私はまだやることあるし」

「はぁ?なに言ってるんだ」

「営業です!仁さん!」

私は仁さんに小声で呟いた

「ここで揉めるのは何も得策じゃないです!行って下さい!」

私は仁さんの背中をマダムの方に押した

「華恋!」

「レ・クランのアドバイザーとして業務命令です!」

私は凛と胸を張って真っ直ぐ仁さんを見つめた

…わかって

仁さん…

「……」

仁さんは黙って私にルームキーのカードを渡すと背を向けて歩き出した

「早速このホテルで一番いいワインを出させるわ!赤がいいかしら!そうね、ステーキには赤よね!」

マダムはスキップでもしそうな勢いで仁さんの後を追った

うん…

これでいい

じゃなきゃ私は仁さんのただの彼女であって

レ・クランのことなんてどうでもいいと我を通す女になっちゃう

それは仁さんの彼女でいる資格がない

私はちょっとだけ鼻の奥がツンとしたけれど

渡されたカードを胸に抱いて1人エレベーターに乗った



~つづく~


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Category - 愛しのショコラティエ

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