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夢恋城へ…ようこそ…

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ヤコフの回遊録~part11~

Category - 番外編
この王子は…普段からこんなに《王子》なんだろうか

真っ白なタキシードに身を包み、温和で微笑みを絶やさない実直そうな執事を従え、曇り1つなく磨かれた純白のリムジンの前で俺達に微笑みかけていた

「ようこそ。我がシャルルへ」

にこやかに手を差し出す姿は生まれながらにこの国の王子として、競うことなく未来を約束された人生を歩んで来た余裕があった

俺はあまり出会ったことのないオーラに圧倒されつつ、不思議な感じを覚えた

差し出された手を握ると、男とは思えない、柔らかな手にまた戸惑う

「ロベルトから連絡を貰ってね」

あの王子はどこまでマメなんだ…

「せっかく初めてシャルルに来ていただいたのだからじっくりとご案内したかったのだけれど…あいにく公務が立て込んでいて」

本当に申し訳無さそうに眉をひそめた

謙虚だ…

ドレスヴァンの王子なら、予告なしに来る奴が悪いと言いそうなところだが

「ロベルトから聞くところによると自由に見学したいとの事だから、車だけでも用意したよ」

…まさかあの真っ白なリムジンか?

セルゲイが一瞬息を飲んだ

リムジンが悪い訳じゃない

白が悪い訳じゃない

車内の装飾がチラリと見えている

真っ赤なソファのシートに小さなシャンデリア

レースのカーテン

側面には花が活けてある

あれをセルゲイが運転して俺が乗るのか?!

「この国は平和だから、君達を襲う者もいないだろう。ましてや王家の紋章付きの車だから、渋滞もない。ゆっくり国内を回ってシャルルを堪能して頂けると嬉しいよ」

…平和だ

執事がゆっくりと前に出た

「車が不要になりましたらご連絡ください。取りに伺いますので乗り捨てて頂いて結構でございます」

誰も盗まないって事か

王家の車に細工する輩がいるんじゃないかとか思わないのか

平和すぎる…

しかしそれを議論するのも今は時期ではないと判断した

エドワード王子に礼を言ってリムジンの方に向かうと、観光客なのか遠巻きに黄色い悲鳴をあげている若い女の集団がいた

エドワード王子は彼女達に軽く手を振る

悲鳴が一段と上がる

するとエドワード王子は近くの花屋から薔薇の花を数本抜いた

「観光客の方かな?シャルルを選んでくれてありがとう」

そう言って薔薇を1本ずつ彼女達に渡し、気軽に握手をし、写真を一緒に撮った

「…諸々全てが異次元だ」

「ああ…」

セルゲイの嘆きに肯くしかない

「ただ1つ言えることは…俺が目指す国はここじゃない…な」

「目指したら全力で止めるぞ」

俺達は去っていくエドワード王子を見つめながら純白のリムジンに乗り込んだ

「ヤコフ、視察はするのか?」

「いや…真っ直ぐ港へ向かえ」

この国を見本とするにはまだ早すぎる

統一し終わったばかりのシアベルの産業を発展させ、全ての国民が食い物に困らない資金の元を作る

芸術に目を向け、娯楽を愛でる余裕を国民に持たせてやりたい

それには衣食住の充実が優先だ

俺なのか、俺の息子なのか、孫なのか

いつかシャルルと肩を並べられる芸術が生まれると信じよう

「何十年とかかろうとも、シャルルの美術館にシアベルの美術品が並ぶようにしてやるさ」

「俺は担当から外せよ」

「最初っから数に入れてねぇよ」

「ふん…」

俺の相棒はミスマッチな真っ白なハンドルを回した

港に着いたら船に乗ろう

そして次の国は…リバティ王国

俺が一番相対したかった王子が待っている筈だ




きっと…ロベルト王子が連絡しているだろうからな


~つづく~
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