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2課の彼の恋~花井一沙~4

彼女とはクラシック好きの友人を通して知り合った

…一目惚れだった

俺らしくないと自分でも思う

だが、彼女に逢ったその瞬間に何かが光った

瀬名に言ったら思いっきりからかわれるだろうな

まぁ、瀬名に限らず全員だろう

それでも構わない

俺は心底彼女が欲しいと願った

彼女とはすぐに恋に落ちた

ときめきと安らぎの両方を抱き抱えている…そんな気持ちだった

強気な瞳が時々不安げに揺れる

か弱い体が急にハープの前では躍動する

究極のツンデレかもな

そういったものに翻弄される筈がないと思っていた盤石な俺の意志は見事に砕け散った

「ねぇねぇ一沙」

ある夜、まだ汗が引かないうちに彼女は俺の横で微笑んだ

額に汗でくっ付いた髪を払ってやると、くすぐったそうに笑った

「私ね、初めて父に褒められたの。ようやく音色が柔らかくなったって!感情が出てるって褒められたの」

彼女は嬉しそうに俺の肩に頬を寄せた

「姉がこっそりと『彼氏ができたのね』って」

ふふふっと彼女は照れたように俺を見つめた

「優しい曲の時には優しい一沙を思い出すの。悲しい時は一沙と別れた事を想像する。激しい曲の時には…今みたいな…」

「じゃあ今度聞かせてくれよ…俺に抱かれた感想の曲を」

「…うん」

「まさか尻つぼみじゃないだろうな」

「違う!…ずっと…激しい…ずっとずっといつまでもときめく…」

俺は懸命に言い訳をしに上に来た彼女の頬をそっと撫でた

「お前の力になれてるなら嬉しいよ…そのためなら何度でも…」

俺は彼女の腰に手を添えた

長い髪が垂れて俺の頬をくすぐった

「一沙…」

「より激しくしてやる…来い…」

微笑みあって俺達はまた一つになった






彼女から留学の話を聞かされたのは、俺が結婚を意識し、ボスに打ち明けた直後だった

「フランス?!」

それはあまりに遠い国だった

いくら通信機器が発達しているとはいえ、触れることはできない

彼女は向かい合ったテーブルの下でハンカチを握りしめていた

「…離れたくない一沙と…でも」

留学するのは彼女が師と慕っていたハープ演奏者がいる大学だった

まず弟子を取らないと有名な偏屈音楽家が、彼女の演奏を聞いて、まだ荒削りの才能を磨いてみたいと言って来たらしい

そんなことはもう一生に一度もないだろう

「だったら…行って来いよ」

俺は言いながら喉が張り付いて声がかすれたのを覚えている

彼女には無限の可能性がある

彼女の演奏に心を震わせる人達がこの先何百、何千人と現れる

彼女の音色で救われる人がいる

そんな彼女が誇らしい

そんな彼女だから、これから開こうとする蕾をこの俺が潰すべきじゃない

例え日本とフランスに別れようとも…

「一沙…」

俺は…彼女の行く手を阻む事はしたくない
せめてもの男の意地だ

「笑って…別れよう」

俺の言葉に彼女は一瞬目を見開いて

そしてゆっくりと頷いた



花火大会は日本の姿を焼き付けたいという彼女の願いを叶えたくて

最後のデートに選んだ

嫌いになった訳じゃない

けれど別れる

思いを吹っ切るために厳しい言葉を浴びせて嫌われる方法もあった

でもそれは、先に察した彼女に拒否された

「私に楽しい曲を弾けなくさせる気?笑って別れようって言ったの一沙よ」

彼女はそう言って繋いだ手に力を入れた

多分…瀬名に見られたのはその頃だろう

俺達はただずっと手を繋いで花火を見上げていた



『重荷になるかならないかは彼女が決める事だし!待っててくれるって思ったら頑張れるかもしれないじゃないですか』

『重荷になるかならないかは今わかるもんちゃうやろ!1年位経って重かったら彼女から言ってくるわ!そしたら胸張って別れたれや!堂々と振られて来い!』

野村さんの車で成田まで飛ばす間に瀬名と天王寺に言われた言葉を思い出す

俺は…彼女の重荷になりたくないと勝手に決めていた

何の疑いもなく

彼女の意見は…

アイツはどうしたかった?

俺に求めるものはなかったのか?

言いたくても言えなかったのか?

それだけは確かめないといけない!

俺は空港まで飛ばして出発ロビーに走った

フランス行き…どこだ!

息を切らして目的の場所に近づくと

見覚えのある彼女の姿を見つけた

「○○っ!」

俺は叫んだ

人目もはばからずに

彼女は誰かと話していたが、すぐに俺を見つけてビックリしたように固まった

そして…

「一沙…!」

彼女は何の躊躇いもなく俺の胸に飛び込んできた

俺達はただただ…抱き合った

俺の首に腕を回して必死にしがみつく彼女を強く強く抱きしめた

「一沙…私…」

「お前の気持ちを聞いてやれなかった…お前の重荷になりたくないと思うのは俺の自己保身だ…お前と離れる言い訳を正当化しているだけだ…まだ聞いてない…お前の気持ちを」

「一沙…私…」

彼女は涙を必死で止めようとしながら俺のシャツを掴んだ

「一沙…私のわがままを聞いてくれるの?」

「ああ…」

「だったら…帰って来るまで…」

「うん…」

「私を忘れないで…」

「それだけか?」

「あと…」

「ああ…」

「待って…いて欲しい」

「それがお前の願い全部か?」

「え?」

「ちゃんと待っててやる…教会を予約してな」

「か、一沙…」

「キャンセルはしたければすればいい…重荷にするな。心の支えにしろ」

「ありがとう!」

彼女は更に思いっきり俺に抱き付いてきた

俺達はぎりぎりまで抱き合っていた




「君が花井君か?」

飛び立つ飛行機を見送る俺に声をかけてきたのは彼女のご両親だった

…一気に冷や汗が流れ出す

けれどそこで俺の中で大きなスイッチがONになった


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Category - 2課の彼の恋(特捜24時)

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