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2課の彼の恋~天王寺豊~3

うちの高校はスポーツが盛んやった

俺がいた野球部も十分甲子園を目指せる強豪校やった

現にエースやったリュウはプロになったし、先輩はメジャーリーグに行ったしな

他の種目もそれなりに強かったけど、アイツがいた同級の年のソフトボールは最強やったと思う

なかなか野球部と一緒に練習はできへんかったけど、時々見る練習でそのレベルの高さは俺らも認めていた

中でもアイツは2番でセカンドやったと覚えてる

2番でセカンドはセンスがないとつとまらへん

よく言えば器用やし、悪く言ったら曲者や

「ひどい言い方やなぁ」

10年ぶりに再会したアイツとそんな昔話に花を咲かせた

「豊君は真っ向勝負のピッチャーやったね」

「なんや、見とったんかい」

「そりゃ気になるでしょう?野球とソフトはお雛様と御内裏様みたいなもんや」

「…その例えようわからんわ」

わからん言いながら、少しはわかっていた

アイツはソフトボールを野球の下と絶対に思っていない

そりゃ、野球の方がメジャーだ

上野が出てきて世界一になったから注目されたけど、俺らが学生の頃はソフトボールは野球の女の子バージョンやて言われてたもんや

お雛様と御内裏様は対等や

上下なく並んでる

それに例える所がなにわ女の意地やろうな

「豊君はケガで野球辞めてしまったやん…悔しかったやろ?」

肘の靭帯損傷で俺は最後の夏の甲子園を前に野球を辞めた

悔しかったけど、それがあったから警察官になろうと思えたんや

人生、何がどう転ぶかわからんもんや

お前はどうしてたんやと聞くとアイツは困ったように眉をひそめた

「ソフトボールを続けたかったけど、それじゃあ食べていかれへん」

夜も更けてきて客の居なくなった店で、俺達はカウンターで並んで何杯か目のビールを空けた

「私の夢はね」

ちょっと酔っ払ったのかアイツは頬杖を付いて小首を傾げた

…めっちゃ可愛いやん

俺は照れ隠しにビールを飲み干した

「あの頃の私の夢は、いつか高校の野球部の監督と結婚して、一緒に寮に住む事やったんよ。で、毎日毎日部員のご飯をいっぱい作って、応援して一緒に甲子園目指すの」

「それ寮母のおばはんやんか」

「ええやないの!夜なべして御守り作って、千羽鶴折って、胃をキリキリさせながら応援したかったの!」

目をキラキラさせながら言うアイツはこんなにも可愛いかったんやって初めて気がついた

高校時代の俺は何で気付かんかったんやろうなぁ

「まだその夢は余裕やろ。はよ結婚できそうな監督探さなな」

ズキッ!

なんや…

ズキッ!ドクっ!ズキズキ…

めっちゃ胸が痛い

なんなんや…この気持ちは!

俺は自分の意味のわからん反応に動揺した

「結婚は…まぁいいわ」

アイツのトーンの落ちた声に思わず目を向ける

「男はコリゴリや…恋愛も忘れたわ」

「嫌な目にあったんか?…言いたくなかったら言わんでもいいけど」

ほんまは聞きたいのに遠慮したふりをする

いつの間にか身についた刑事の習性やな

「まぁな…」

アイツはちょっとグラスに口をつけた

知らんぷりして本人が言い出すのを待つ

聞きたいような

聞きたくないような…

自分の心臓がバクついているのがわかる

「ソフトボール一筋やったやん…恋愛もせんと。せやから免疫が無かったんやろな…短大行って普通の女の子してたら一人の男に出会って」

アイツは遠い目をカウンターの中に向けた

栗色のショートカットの髪を耳にかけると小さなピアスが揺れた

恋愛は嫌やって言いながらハート型やんけ…

口の中で一人ツッコんでみる

「夢中になってしもうて…東京から大阪に短期間来てたサラリーマンやったんやけど、めっちゃ好きになってん」

「さよか…」

相変わらず胸が痛い

「東京帰る言うから、追いかけたんや。周りはあんな男、やめなって言ったのに、反対されるほど燃えるんやね」

恋愛はそんなもんや…なんて知ったかぶりする

俺はそんな恋愛してへんのにな

「大阪の暮らし捨てて東京まで追っかけていったら」

アイツはぎゅっとグラスを握った

「…奥さんと子供がいてたわ…」

「はぁ?」

思わず声を上げた

嫁と子供いてんのに一人者のふりして騙しよったんか!?

許せん!

「見抜けんかった私がアホやってん」

ちゃう!騙すヤツが絶対に悪い!

どこのどいつや!

ぼっこぼこにしてやる!

「職権乱用はあかんで、豊君」

怒り狂う俺にアイツは苦笑いを浮かべながら腕を押さえた

「もう大阪帰られへんし…どないしょうか路頭に迷ってたら、ソフトボールの先輩がこの店のオーナー紹介してくれてん。もう年で辞めたいんやけど、ご飯食べに来てくれる高校生が食いっぱぐれるから辞めれないって…せやからあんたが代わりに継ぎやって言ってくれはったんや」

そうか…

持つべきものは体育会系の先輩やな

困った時にはほんまに助けてくれる

「○○は、監督の嫁さんになって寮母さんになる夢はなくなっても、高校球児を食べさせて応援する夢は叶ったわけやん」

俺は下手な慰めを口にしていた

「そうやな…今はそれが救いや」

「俺かて肘壊したから刑事になれたんや。壊さんかったらプロに行って2軍でくすぶってるわ」

俺の実力はその程度や

プロの世界は厳しい

「○○もしんどい目にあったかもしれへんけど、そのおかげで東京来れて、高校球児のオカンになれて…俺と再会できたやん」

最後の一つはこじつけやな

「ええ方に転がってると思うで」

人生でなにも悪い事もないまま過ごせたら幸せかもしれへん

せやけど悪いと思った事で方向が変わっていい方に向いたならそれでいいやん

それも人生や

もちろん悪い方、悪い方へと転がっていく奴らも大勢いる

俺はそんな連中を毎日毎日見てる

そんな奴らでも、逮捕されたからそれ以上の罪を犯さずに済んだっていう良い方向もあんねん

悪い事ばっかりや、自分は不幸や、そう思うとどんどん悪なる

ジャンプする前はしゃがまんと高く飛べんやろ

今はしゃがんだとこや

今から大きく飛びや…

お前ならできる

俺は必死で熱弁していた

コイツには笑っていて欲しかった

なにわ女らしく豪快に、底抜けに明るく!

グラウンドの真ん中で大声出してたあの頃みたいに

「豊君…ありがとう…」

笑って欲しかったのに結局泣かせしもた

その日から彼女は俺の中で特別な存在になった


~つづく~

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Category - 2課の彼の恋(特捜24時)

4 Comments

ララぽん☆  

Chikaさん、ありがとうございます♪

お言葉に甘えて修介で妄想してますよ~
何ならモフモフワンコでもいいわ(笑)

どんな話になるのか楽しみです。


2015/08/27 (Thu) 12:36 | REPLY |   

chika  

ララぽん☆さん♪お久しぶりです
コメントいただけるならどこでもよいよい(笑)

脩介とモフモフわんこは切り離せなかったですわ

刑事じゃないので自分と置き換えていただけたらうれしいッス!

2015/08/27 (Thu) 07:24 | REPLY |   

ララぽん☆  

間違えて天王寺さんの話に、修介のコメントしちゃいました!!Σ( ̄□ ̄;)

ごめんなさいっ

2015/08/26 (Wed) 23:29 | REPLY |   

ララぽん☆  

お久しぶりです!

お気に入りの修介のお話で嬉しいです♪

あつかましく自分だったらなぁ…とか思って読んでます。
今のところワンコ好きくらいしか当てはまってないわ(^_^;)

2015/08/26 (Wed) 23:26 | REPLY |   

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