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2課の彼の恋~桐沢洋~1

花火大会のあの時、私があんまり桐沢さんの事を気にするから、征司さんは呆れていた

「桐沢が女といることはそんなに珍しい事なのか?」

「えっと…征司さんが女の人と歩くぐらい?」

「…あいつは女嫌いだったか?」

「ん~っていうか硬派?」

「野村の正反対の意味だろう?」

「間違ってはいないけど…」

う~んと首を傾げる

桐沢さんはモテる

本人があまりに自覚がなさ過ぎるだけだ

桐沢さんとデートしたい人なんて警視庁内で石を投げれば誰かに当たるくらい、大量にいる

その桐沢さんが花火大会なんていうベタなデートに女性と2人きりで来ている

これが大事件じゃなくてなんでしょうか!

「野村さんがプラトニックを貫くくらい珍しい事です」

「それは相当だ」

征司さんは真剣な顔で頷いた

「お前がそんなに気になるのなら直接聞けばいいだろう」

「へ?」

征司さんは私の手を取ってどんどんと人ごみの中を突き進む

桐沢さんの背中を追って…

いやいや!

知りたいけど!

本人に直接なんてっ…!
しかも彼女もいるし!
そこまで追求するって部下としてどうよ

「ちょっ…征司さんっ…!」

なんとか征司さんを止めようした時、急に征司さんが立ち止まった

「おっと…!」

思わず大きな背中にぶつかってしまう

「征司さん、どう…」

「あれもデートと言うのか?」

征司さんに耳打ちされて背中越しに覗いてみる

そこには

ちょっと人ごみから離れた場所から何かを伺っている桐沢さんと

その隣で花火を撮影している風に見えるビデオを持った彼女

明らかに花火は取っていない

視線の先は大勢の人が行き交う屋台

桐沢さん達が見ているのは1軒のたこ焼きの屋台だった

「たこ焼き20皿頼んだモンだけど」

どう見たってパシリ風ではないお兄さんがそう言って

「はいよ、用意してあるよ」

たこ焼き屋の年配の男性は足元に置いてあった紙袋を渡した

「何で紙袋に入れてあるんだろう…たこ焼き冷めちゃうのに」

「発想が香月らしいな」

征司さんはクスッと笑う

「香月、こっちの方向の方が確認しやすいだろう…」

征司さんはたこ焼き屋を背にして私を抱きしめた

ドキドキする!

ドキドキするけど、これは事件のドキドキも混じっている

「もっと抱きついてもいいんだぞ…」

征司さんの甘い声に力が抜けそうになる

けれど目を凝らせば桐沢さんも彼女と恋人同士のように寄り添ってはいるけれど視線は仕事中のボスの目だった

「…薬物の取引か」

征司さんが耳に唇を寄せてつぶやく

「…今、凄く公私が入り乱れてます…」

このままキスしたい衝動に駆られながらたこ焼き屋を監視する

「じゃあ…代金だ」

袋を受け取った男は封筒を渡す

どう見たってたこ焼きの代金ではあり得ない厚みの封筒だ

完全に何かの取引…

薬物なのか拳銃なのか

拳銃なら今、この雑踏で確認するのはマズイ

桐沢さんもそのつもりなのだろう

動く気配はない

ただ、彼女がそっとデジカメを回してる

その時、

「お前らこれはなんだ!」

「袋を見せろ!」

聞いた事のある声がして屋台に割り込んできた人がいた

「ダメでしょ!1課!」

1課の3バカトリオが袋を受け取った男の手を掴む

「なにしやがる!」

男が暴れる

「捜査1課だ!中身を見せろ!」

徳田さんが大声を上げる

バカ!拳銃だったらどうすんのよ!

屋台の男が台の下に手を伸ばした

包丁!?

私が飛び出したのと、桐沢さんが飛び出したのは同時だった

「てめぇ!なにしやがる!」

両隣の焼きトウモロコシ屋と、イカ焼き屋も警察と聞いて瞬時に戦闘態勢に入った

「きゃぁ!」

異変に気付いた回りの人が騒ぎ始めた

イカ焼き屋、焼きトウモロコシ屋、たこ焼き屋がそれぞれに包丁を手にしている

商売道具だと言えるような代物じゃない

1課はまさか両隣も仲間だと思わなかったのか、3バカトリオの腰が引け始めた

3バカトリオ対屋台3人と客1人

浦田さんはもう下がり始めている

屋台の男達が包丁を持って前に出た瞬間、桐沢さんが飛び出し、包丁を持った手をねじあげた

私も包丁を奪い取って投げ飛ばす

もう一人が襲って来るかも!と思ったけど、振り向けば、あっという間に征司さんが無表情のまま合気道の技で地面に転がしていた

残る客はというと

いつの間にか強面の男達が取り押さえていた

…4課だ

1課はというと、客の男が落とした袋をさっさと拾って中身を3人がかりで確認して白い粉の入った袋を自慢気に掲げていた

「馬鹿野郎!!!!」

当然の事ながら4課から怒声が浴びせられた

しょうが無いよねぇ~

「瀬名!氷室!」

桐沢さんが屋台の男3人を4課に渡すと笑顔で声をかけてきた

「助かったよ。居合わせてくれて…」

「うちのヤマじゃないんですよね?」

2課の仕事なら私も把握してるし、飛び出して来るのは2課のはず

「マル暴の連中じゃ面が割れてるからってちょっと頼まれたんだよ」

人がいいんだから…

「結構危ない所でしたよ」

「まさか1課がしゃしゃり出てくるとは思っちゃいなかったしな」

苦笑する余裕が憎らしい

「現場の証拠を取って検証した上で踏み込む手はずだったんだがな」

桐沢さんが振り返ると、ビデオカメラを持ったままの彼女がいまだに緊張したまま固まっていた

「彼女はテレビ局のアナウンサーだ。元々のネタの提供がテレビ局へのタレコミだったから、ネタ提供とスクープを4課が取引したんだ」

ああ、キャスターの、いわゆるニュースのお姉さん

言われて見れば朝や夕方のテレビで見たことがある

バラエティーでロケに出て食レポをするようなアナウンサーじゃなくて、どちらかというと報道メインでスタジオから現場に呼びかけているキャスターさんだ

その彼女が現場にカメラ?

疑問が増殖する

「ちゃんと取れたか?」

桐沢さんが声をかける

…仕事の割には声が優しくない?

ちょっとした事に敏感な乙女です

「…は、はい」

彼女は一つ息を飲み込んでから答えた

瞬間で笑顔に変わる

手入れの行き届いた髪と肌

無造作に編み込まれた長めの髪型は私達一般人ではなかなかできない

日頃からプロのヘアメイクさんについてもらって教えてもらわないと無理無理!

お化粧もナチュラルメイクで派手じゃないのに魅力を最大限に引き出す手法だ

…圧倒的に女として負けている

一人勝手に落ち込んでいると彼女はやんわりと微笑んでくれた

「ありがとうございました!取引の現場以外にも逮捕する場面まで撮らせて頂きました。貴重な可愛い女性刑事さんの活躍も…」

いやいや~活躍ってほどじゃあ~

それに可愛いだなんて

つい顔がにやけてしまう

あっという間にいじけ虫は退散した

我ながら単純…

「瀬名はうちの貴重な戦力だ。男ばかりの職場で女性が活躍するという特集ならいつでも声をかけてやってくれ」

「そうですね!次の企画に出してみます。その時には瀬名さんよろしくお願いします」

「は、はい!喜んで!」

「お前が緊張してどうする…」

横で征司さんが苦笑した

「じゃあ今からすぐに編集しないといけないから…」

「ああ、局まで送って行こう」

桐沢さんはずいぶんとスマートに彼女をエスコートして行く

さり気なく手が腰にある

あのボスにあり得ない光景!

「絶対…怪しい」

「別にいいんじゃないか?」

去っていく2人を見送りながら私達はようやく花火大会に戻った



翌日のニュースでしっかりと容疑者達を確保する桐沢さんと私と

当たり前だけど征司さんが映って…

「この組合せの花火大会って…」

2課で尋問される羽目になった

そして浅野さんの言葉に全員が頷く

「お、お、隠密調査ですって!」

「俺らに内緒でかい!」

「隠密調査になぜ監察医が参加する必要がある?」

「たまたま氷室先生が合気道の達人だからよかったけど…」

「解せません…裏がありそうですね」

2課の全員に取り囲まれる

もうバレるのは時間の問題かも…

けどけど!

絶対桐沢さんがデートしてる方がビッグニュースなんだけど!

本人が出張しているからどうにもならない

私は深い溜息をついて机に突っ伏した


~つづく~
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Category - 2課の彼の恋(特捜24時)

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