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ヤコフの回遊録~part13~

Category - 番外編
はぁはぁと息を切らせながら執事であろう若い男はキース王子の元に駆け寄った

「遅いっ!」

いきなり怒鳴られ、執事は直立不動で固まった

言い訳すらさせてもらえないようだ

「も、申し訳ありませんっ!」

膝に額が付きそうな程、頭を下げている

セルゲイのこんな姿は一生見ることはないだろう

させるつもりもないが…

「お前は側近を乗せて後をついてこい!俺はヤコフ王子を乗せていく」

乗せていく?

何の事だ?

セルゲイと思わず顔を見合わせる

が、それはすぐにわかった

キース王子の向かった先には雑誌で見たことしかないような超高級スポーツカーが止まっていた

その後ろには真っ黒なリムジン

「それではヤコフ様はこちらへ…」

キース王子の執事はスポーツカーの助手席の扉を恭しく開けた

どう見ても2人乗りだよな…

「さっさと乗れ。それともスポーツカーを見たことがないのか」

いちいちこいつは…

ムッとしたまま乗り込むと、キース王子がスッと運転席に滑り込んできた

「運転は…」

「俺がするに決まっているだろう」

当たり前のようにエンジンをかける

バックミラーで後ろを見るとセルゲイが戸惑いながらリムジンの後ろの席に案内されながら乗っていく

「王室専用リムジンに一人で乗った執事はあいつが初めてだろうな」

くくっとキース王子はおかしそうに笑った

…俺もそう思う

あいつ居心地悪いだろうな

「サンクト=シアベルの道路の舗装率はどれぐらいだ?」

キース王子はスムーズに車を出すといきなり聞いてきた

俺を試すつもりか?

「57.4%だ」

「リバティは80.9%だ」

「サンクト=シアベルの方が領土の面積が広い」

「そんな事はわかってる。負けず嫌いな奴だな」

キース王子はふんと鼻で笑うと軽快に飛ばしていく

揺れの少なさは運転技術と車の性能と…道路事情か

「サンクト=シアベルは石油産出国だ。ガソリンには事かかんだろう」

「それがなんだって言うんだ」

「車を持っている国民にはありがたいが、持っていない連中には何の意味もねぇってことさ」

キース王子は前を見たまま語り続ける

「車を持ちたいと思うにはどうすればいい?道路だろ。道が整備されれば車を買う。一旦買えばもう馬に頼る事はしない」

「道路整備を充実させろと言いたいのか?」

「お前の国はリバティの50年前の状態だ」

わかってる…

だからこそ来たかったのだ

キース王子の祖父、クラウス前国王が統一したあとリバティは急激に開発が進み、経済大国となり、今や世界一のGDPを誇る

「爺様はまずは道路整備を優先させた。それに国民を総動員させた」

「失業率が下がるわけだ…」

「仕事があれば金は入る。金が入れば購買意欲も湧く。道路整備が整えば車は勝手に売れていく」

そんな簡単に行くかっ!

「お前の国はいかに戦争を優位にするかを第一にしてきた。だから、わざと馬がぬかるみにはまって動けない土壌になっているはずだ」

こいつ…かなりシアベルの事を頭に叩き込んでいるな

6ヶ国きっての天才王子というのは嘘ではないのか

「まずは土壌整備だ。中途半端に整備せずに道路を作るな。必ず歪みが起きて大事故を引き起こす。徹底的に頑丈な土地を作れ」

かのアジアの大国はまさにその手抜き工事の為に多くの死者を出し、無駄な補修工事を強いられ、更に歪んででこぼこになっていると聞く

最初が肝心だ

「もちろんそうするつもりだ。利益優先で目先の発展を目指したところで先はない」

「お前がそれをわかっているならシアベルは発展するだろう」

「…随分と親切にアドバイスをくれるんだな」

意外と言おうか…

「あん?んなもんライバルは強くねぇとつまらないだろうが」

キース王子は俺を横目で見てニヤリと笑った

「シアベルはリバティと同じで、でかい島国だ。それを1つの国が統一した。リバティとよく似ている。お前は俺の爺様と同じ道を辿るだろうさ」

クラウス前国王は決して長寿ではなかった

それがわかっていたかのように急速に国をまとめ、次々と近代化させていった

「前国王が道を耕し、現国王が堅実に固め、俺が道を延ばす…それが今のリバティだ。シアベルも今はライバルでもなんでもないが、50年後、お前の孫が王座に就く頃にはリバティと肩を並べていろ。じゃなきゃ面白くねぇ」

こいつは目先の事を見ていない。常に先を先を見据えている

これが大国リバティの帝王学か

「まぁ50年後にお前の孫は俺が押さえつけてやるさ」

「お前…現役のつもりか」

「50年後だろ?まだ70前半じゃねぇか。現役バリバリだ。息子と孫と3人でシアベルを植民地にしてるかもしれねぇから、しっかり治めとけよ」

「逆もあるかもしれないぞ。お前も気を引き締めておくんだな」

「…俺に喧嘩を売るとはいい度胸してやがる」

キース王子は怒りながらも面白そうに笑った

こいつは俺とタイプが似ている

ライバルがいたほうが燃える

競争こそが最高の燃料だ

いつか大国リバティと肩を並べる

いや、越えてやる

俺の中に新たな炎が灯った瞬間だった


~つづく~
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